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貸倒引当金−2

貸倒れの発展

前回の問題では、貸倒れた金額が引当金の金額以内でした。

では引当金以上の貸倒れがあった場合はどのような仕訳になるのでしょうか。

貸倒引当金とは、貸倒見積高でした。

しかし前期に見積もった以上の貸倒れが生じてしまった。

この時に注意すべきなのは「貸倒見積高の見積りが適切であった」かどうか。

適切であった場合、この貸倒れ額は予測不能ということで貸倒損失を計上します。

前期発生であっても貸倒損失勘定を使用します。

 

 

なぜ全部貸倒引当金で仕訳してはいけないのか。

そもそも貸倒引当金というのは無形ですが、資産という有限のものです。

その有限のものを数値以上に減らすということはできないのです。

同じ資産である、現金に例えるとわかりやすいでしょう。

現金が1,000円だけど、支払うべき(減らすべき)金額が1,500円。

1,000円しかないので、1,500円支払うという仕訳は切ることができないですよね。

この場合、普通どのようにするか。

1,000円は現金で支払うのだけれども、残りの500円は別のもので支払うという方法をとりますよね。

仕入れなら、買掛金。

固定資産の購入なら、未払金。

 

貸倒引当金も同じです。

帳簿上の金額を超えて支払う(減らす)ことはできません。

そのため、上のように違う方法で計上する必要があります。

貸倒引当金の場合の代替勘定が貸倒損失であるというだけです。

 

 

理論はどうでもいいです。

とにかく、「引当金以上貸倒れた時は貸倒損失」と考えてください。

 

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例)前期発生した売掛金10,000円が当期に貸倒れた。なお、前期の決算に貸倒引当金を3,000円設定している。また、貸倒引当金設定時に置ける貸倒見積高の見積もりは適切であった。

まず注目すべき部分は「前期発生した売掛金10,000円が当期に貸倒れた。」というところ。

前期発生・当期貸倒ということで引当金を填補する仕訳を行います。

次の文章で「なお、前期の決算に貸倒引当金を3,000円設定している」と書いているので、貸倒引当金を減らす仕訳になります。

しかし、金額が少ないです。

貸倒れ金額の方が引当金よりも高い。

前期の見積もりが間違っていたのではないか、という疑惑を抱きますが次の文章ではそれを否定しています。

「また、貸倒引当金設定時に置ける貸倒見積高の見積もりは適切であった」。

つまり、貸倒引当金の不足額は貸倒損失として仕訳を行うことになります。

売掛金の貸倒れ→減る→貸方。

引当金は売掛金の相手として作用するもの→借方。

不足額は貸倒額と引当金との差額で一瞬。

貸倒損失は貸倒引当金の代わりとして入るので、引当金と同じ借方になります。

※上の現金の例で書いた取引の仕訳と同じ考えです。
 (仕入)1,500 (現金)1,000
         (買掛金)500←現金と同じ貸方になっている。

 

まとめた仕訳が、

(貸倒引当金)3,000 (売掛金)10,000
(貸倒損失) 7,000

となります。

 

 

 

償却債権取立益

貸倒れとして処理した売掛金などが回収できた、という場合。

この時、貸倒れた時の考え方と同じで「いつ?」というのが重要になります。

パターンは2つです。

前期貸倒れ・当期回収

当期貸倒れ・当期回収

 

 

当期貸倒れ・当期回収

まずは簡単な方。

当期貸倒れたが、当期に回収できた場合。

「これは貸倒れ自体が無かった」として処理します。

当期中に回収できたのならば、貸倒れていないということですから。

決算をまたぐと貸倒れたという仕訳を修正することができなくなるので、この処理は不可能になります。

 

貸倒れが無かったということは、その時に計上された貸倒引当金・貸倒損失は消す必要があります

 

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例)当期発生の売掛金20円が当期に貸倒れとなったが、当期に全額現金で回収された。

当期貸倒れ・当期回収なので、貸倒れは無かったということにしなければいけません。

少し遠回りに作っていきます。

まず、貸倒れ時点での仕訳。

(貸倒損失)20 (売掛金)20

しかし回収できた。

つまりこの貸倒れが無かったということにしなければいけません。

貸倒れが無かったということはこの仕訳の逆仕訳を行えば消えますね。

(売掛金)20 (貸倒損失)20

逆仕訳を行えば上の仕訳と合わせれば、最終的に貸借合計がどちらも0になって貸倒れが発生しなかったという形になります。

これで貸倒れの存在を消すことができました。

最後に回収できたという仕訳です。

これは普通に現金で売掛金を回収した時と同じ仕訳を行えば良いです。

(現金)20 (売掛金)20

これで回収できた場合の仕訳が全て終了したことになります。

回収できた時にすべき仕訳は、

(売掛金)20 (貸倒損失)20
(現金) 20 (売掛金) 20

の2つです。

 

2つ仕訳とか面倒くさい、という人もいると思います。

なので、上の2つをまとめてみましょう。

上の仕訳、貸借どちらにも売掛金が入っていますよね。

しかも同じ金額。

ということは、これは相殺できるのです。

(売掛金)20 (貸倒損失)20
(現金) 20 (売掛金) 20

これでスッキリしましたね。

(現金)20 (貸倒損失)20

 

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ではこれを一直線に求めてみましょう。

問題を読んで確認すべきことは、当期発生・当期貸倒れ・当期回収という3つ。

前2つから、貸倒損失を消すということに気づいてください。

そして最後の当期に現金で回収ということで、現金が増加するのだなということに気づいてください。

これでもう完成する要素は揃いました。

「現金増加→借方」だから「相手勘定(貸倒損失)→貸方」。

回収した金額は問題文より。

(現金)20 (貸倒損失)20

以上。

売掛金は考えなくても良いのか?という人もいるかもしれません。

しかし、回収した売掛金はすでに貸倒れの時点で減らされています。

そのため、これ以上は増減の必要性がありません。

それは上の仕訳を見てもらえばわかります。

一旦貸倒れが無かったということで増やし、回収したということで減らされる。

結局動いた金額が同じだったから、売掛金はいじる必要がないのです。

これは全額回収したからであって、一部回収の場合とは異なります。

 

 

例)前期発生の売掛金20円が当期に貸倒れとなったが、当期に全額現金で回収された。

次は前期発生・当期貸倒れ・当期回収の場合です。

前2つから、上の問題と違って貸倒引当金が使用されたということがわかります。

これは貸倒れ時点の仕訳が、

(貸倒引当金)20 (売掛金)20

この形だからですね。

つまりこの問題で消すべき対象は貸倒引当金になります。

そして当期に現金で回収した。

現金から考えるとすぐに仕訳は完成します。

現金増加→借方、相手勘定→貸方になる。

(現金)20 (貸倒引当金)20

以上です。

貸倒損失が貸倒引当金になっただけなので、難しくないと思います。

 

前期発生か当期発生の売掛金かで現金の相手勘定が変わるというだけで、基本的な仕訳は同じです。

 

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前期貸倒れ・当期回収

前期に貸倒れた場合、その貸倒れが存在しなかったということにはできません。

前期の貸借対照表などに干渉することは不可能です。

ですので、この場合は普通に当期の利益として計上するしかありません。

この場合の収益科目は「償却債権取立益」です。

償却債権取立益を使用して仕訳を行うだけですので、難しさはほぼ無いと言っていいでしょう。

 

例)前期発生の売掛金20円が前期に貸倒れとなったが、当期に全額現金で回収された。

前期貸倒れ・当期回収という所に注目してください。

「前期貸倒れ」と見た瞬間、発生時点は全く関係ありません。

私たちがすべきなのは、当期の仕訳ですから。

上の2つのキーワードから、償却債権取立益勘定を使用するということに気づいてください。

そして現金で回収したので、借方に現金勘定です。

相手勘定は空いている貸方になります。

※収益が増えるから、収益勘定の償却債権取立益が貸方に来る!とか考えなくても大丈夫です。

(現金)20 (償却債権取立益)20

以上です。

 

 

まとめ

引当金の発展では、「不足額を貸倒損失として計上する」ということ。

 

貸倒れの回収では、「債権の発生・貸倒れ・回収の時期」がキーワードになります。

 

ちなみに、回収が全額でない場合は決算時に貸倒損失や引当金が一部残ります

基準はあくまでも回収した金額です。

回収した金額分、貸倒損失・引当金を減らすだけで大丈夫です。

 

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