仕訳のコツ 初心者講座

初心者さん講座8 手形編

前回までのまとめ

お金勘定。

取引の内容を確認し、お金が増えたか減ったかを確認していきます。

お金が増えたにお金勘定。

お金が減ったにお金勘定。

お金勘定の中身についてはこちら

買掛金と売掛金の取引。

 

買掛金で仕入れた場合。

(仕入)××× (買掛金)×××

お金が減るからお金勘定である買掛金が右に入る。

 

売掛金で売り上げた場合。

(売掛金)××× (売上)×××

お金が増えるのでお金勘定である売掛金が左に入る。

 

現金さんが一番偉い。

 

支払手形

支払手形は買掛金と同じ使い方をします。

つまり「後払いの手段」ということです。

買掛金との相違点は「保証があること」。

法律により、支払いが義務となっているのが支払手形です。

 

手形についてドラマなどで見たことがある人は多いのではないでしょうか?

登場人物がサッと紙に金額を書いて渡すというシーン。

あれがまさに手形を渡す(振出すという)行為で、そのイメージで十分です。

難しい話をしようと思えば色々可能ですが、簿記資格の取得に必要ありません。

興味がある方はこちら。

 

覚えておくべき手形についての知識。

・自分は支払日に手形を持っている人にお金を支払う。

 

支払う側についてはこれだけで十分です。

 

例)A商店から商品100円を仕入れ、代金は同店宛の約束手形を振出して支払った。

問題はこのような形式で出題されます。

ややこしく書いてありますが、「手形を振出して支払いました」と理解できれば問題なしです。

では、、この取引でお金が増えたか減ったか。

商品を仕入れた、つまり購入したのでお金は減ったと考えます。

クレジットカードで支払った時、実際にはまだ支払っていないけどお金が減ったと考えますよね、それと同じです。

お金が減る取引なので、お金勘定は右に入ります。

今回の取引で使うのは「支払手形」です。(約束手形、支払ったという言葉がキーワードです)。

お金が減った原因は「仕入れたから」。

だから、左には仕入勘定を入れます。

(仕入)100 (支払手形)100

 

仕入れの形を覚えている人は仕入れから考えても大丈夫です。

(仕入)××× (お金)×××

この形に当てはめます。

今回は「約束手形を振出して支払った」とあるので、お金の場所には支払手形が入ることになります。

値段は文章から100。

(仕入)100 (支払手形)100

 

例)以前仕入れた時に発生した手形100円が満期日に普通預金口座から支払われた。

これは先ほどの手形の支払日がきたということです。

要は、クレジットカードの支払日がきた、ということですね。

 

重要なのは「普通預金口座から支払われた」という言葉。

口座引き落としということです。

つまり、実際にお金が減ったのです。

普通預金口座と現金は同じ扱いをします。

その金額のお金に触れられるかどうかくらいしか違いはありません。

なので、最上位の現金と同じで、真っ先に仕訳に入れてあげましょう。

今回普通預金さんは減りました。

ですので、普通預金さんの席は右側です。

 

では左に入るのは?

現金が減った原因は誰にあるか。

それは「支払手形」です。

(問題文にそれ以外の登場人物もいないし、決定的ですよね)。

結果、仕訳はこのようになります。

(支払手形)100 (普通預金)100

 

 

受取手形

先ほどは買った側のお話でした。

今回は売った側のお話。

売ったら現金じゃなく手形を受け取ったということです。

この場合は(現金を)支払う手形でなく、(現金を)受け取る手形なので「受取手形」という勘定を使用します。

 

例)商品100円を売り上げ、代金は約束手形を受け取った。

この取引でお金は減ったか増えたか。

商品を売り上げたのだからお金が増える、と考えます。

受取手形は支払手形と同様、お金勘定に含まれるので考え方はほぼ支払手形と同じです。

 

お金が増える=左にお金勘定。

今回「手形を受け取った」とあるので「受取手形」を使用します。

お金が増える原因は売り上げたから。

だから右に売上が入ります。

(受取手形)100 (売上)100

 

これも売上の形から考えてもいいです。

(お金)××× (売上)×××

ここに入れていきます。

問題文からお金は受取手形。

値段は100。

(受取手形)100 (売上)100

 

 

例)以前受け取った約束手形100円が満期となり、普通預金口座に振り込まれた。

先ほどの支払手形と同じ考えで解けます。

偉い普通預金さんがいるので、彼から仕訳に入れてあげましょう。

「預金口座に振り込まれた」とあるので、預金額は増えたということ。

なので、左に普通預金さんが入ります。

現金さんが増えた原因は受取手形になるので、右に受取手形。

(現金)100 (売掛金)100

 

 

裏書譲渡

手形を苦手とする人が嫌がる裏書き譲渡についてです。

手形は紙であることはなんとなくみなさんご存知だと思います。

そして、その手形を他人に渡すという人がいるのです。

 

手形を持っている人が手形の金額を受取る権利を持っています。

ですので、その権利を他人に売るということができます。

馴染みがないと思いますので、例題で状況を見てみましょう。

 

例)商品100円を仕入れ、代金はB商店から受け取っていた約束手形100円を裏書譲渡した。

この取引、一見手形で代金を支払っているから「支払手形」を使うように見えますが、違います。

重要なのは「受け取っていた」というフレーズ。

B商店に渡した手形は受け取っていたものです。

つまり、すでに「受取手形」という仕訳がなされているのです。

渡したのはその受取手形。

ですので、受取手形を減らすという仕訳を行う必要があります。

ここで減らす仕訳を行わないと、永遠にこの100円の手形が残り続けます。

無いものをあると記載するのは犯罪ですので(大企業などでは虚偽記載ということですごく怒られます)。

 

色々書きましたが、文面から何の勘定を使うか判断できれば問題ありません。

「受け取った手形を渡した」という言葉から「受取手形を使う」と答えられれば理屈など不要です。

 

さて、使う勘定についてはここまでにして、どちらに何が入るのかの話を始めましょう。

まずこの取引でお金は増えるだろうか、減るだろうか。

商品を仕入れる=買う、のだからお金が増えるなんてありえないですよね。

ですので、お金が減るという取引であることがわかります。

お金が減る。

つまり、お金勘定は右ですね。

 

ではその減る原因は何か。

それはもちろん「仕入れたから」。

ですので、空いている左には仕入を入れます。

(仕入)100 (受取手形)100

 

仕入の相手は支払手形、という覚え方をしているとここで間違えます。

お金が減ったか増えたか。

渡したのは自分が作った手形か、他人が出した手形か。

この2点を考えれば絶対に間違えません。

 

例)商品100円を売り上げ、代金は以前当店が振出した約束手形100円を裏書譲渡された。

この問題は上の売り上げた問題とは違います。

どこが違うか。

それは「以前当店が振出した約束手形」を渡されたこと。

つまり、自分が出した「お金払います券」が返ってきたということ。

肩たたき券が戻ってきたら肩をたたく必要がなくなるのと同じです。

払う必要がなくなったのです。

 

つまり、前回振出した時に計上した支払手形を減らす仕訳になります。

とはいえ、支払手形をどちらに入れるかはお金が増えたか減ったかで判断します。

商品を売り上げたのですから、お金は増えたということになります。

ということで、お金勘定は左ですね。

では、その原因は何か。

商品を売り上げたからですね。

ではそれを空いている右に入れましょう。

 

(支払手形)100 (売上)100

 

手形の割引

割引。

魅力的な言葉ですよね。

しかし、手形の割引はそのような意味ではありません。

手形の割引を行うのはもらった側です。

つまり、振出した側が支払う金額を減らせるというわけではありません。

 

手形の割引を簡単に言うと、「銀行に手形を売る」。

そしてその場合、銀行に割引料を支払う必要があります。

よって、手形を現金にすることはになってしまいます。

例を見てみましょう。

例)以前受け取っていた約束手形100円を銀行で割り引き、割引料10円を差し引かれた手取り金を現金で受け取った。

まず前提として、この手形の満期日(お金を受け取れる日)はまだ来ていないということ。

だからこの手形はまだ現金として使うことはできません。

スーパーで使えませんよね。

これって意外と困りませんか?

 

バイト代が今月末に振り込まれるけど、今財布と口座に現金はない。

そして、便利なクレジットカードも持っていない。

でも生活するためにはスーパーで買い物をしなければいけませんよね。

となると、現金は欲しい。

 

という状況がわかりやすいのではないでしょうか。

バイトならば前借りという選択肢はあります。

しかし、店の営業をしている場合はそんなこと出来ませんよね。

月末には振り込まれるのだから借金も面倒です。

となると、手元の手形を銀行に渡して現金に換えてもらうのが一番簡単ですよね。

手数料を取られますが、それは些細なことです。

 

色々書きましたが、これは「手数料は取られるけど手形が現金になる」という取引です。

これさえ理解できれば解けます。

さて、今回の取引でお金は増えたか減ったか。

現金を受け取ったとあるので増えましたよね。

ということで、お金勘定の最上位現金さんが左に入ることになります。

 

では、その金額はいくらなのか。

問題文のうち、お金に関わらない余分なものを端折ればこのようになります。

「手形100円のうち手数料10円を差し引いた額を現金で受け取った」。

さて受け取った現金はいくらでしょう。

100円の手形から手数料10円を差し引いた金額。

つまり、100−10=90円です。

 

現金の場所と金額がわかったので、次はそのほかの項目について。

 

割引いた手形について。

割引いた手形は支払手形か受取手形か。

これの判断は単純です。

この手形は「以前受け取ってた」手形です。

よってこの手形は当店が振出したものでないことがわかります。

ですので、この手形は受取手形であると判断します。

で、この受取手形は左右どちらに入るのでしょうか。

現金さんが左にいます。

この現金さんが増える原因は何でしょうか。

そう、この受取手形を割り引いたことです。

なので、現金の反対側の右側に入ることになります。

 

金額はいくらでしょう。

銀行に割り引いてもらった手形の金額、店から減る手形の金額はいくらでしょう。

100円ですね。

よって、受取手形が右に100円です。

 

これを当てはめると

(現金)90 (受取手形)100

となります。

 

これを見て違和感を抱いてください。

そう、左右の金額が一致していないのです。

これでは10円がどこへ消えたのか不明ですよね。

それをきちんと記載しましょう。

 

左右の金額を一致させるため、左に10円です。

ではその勘定科目は何になるのか。

今回の取引は「手形の割引」です。

そして、もう一つの言い方があります。

「手形を銀行に売った」です。

上でも書きましたが、これが簡単な言い方であり正しいのです。

手形を売ったことで、本来得られるはずだった10円が受け取れなくなったのです。

この時、皆さんはどう思いますか?

「10円損したわー」と思いませんか?

この気持ちが勘定科目になっています。

手形を売ったことで生じた損。

使う科目は「手形売却損」です。

 

したがって、完成形はこちらになります。

 (現金)  90        (受取手形)100 

(手形売却損)10

 

まとめ

今回のページでまず覚えるべきことは

・「振出した」があれば「支払手形」。

・大体は「受取手形」。

・割り引いたら「手形売却損」があるはず。

です。

これを覚えれば、あとはお金勘定の考え方で解けるはずです。

現金と普通預金が偉いので、これらから入れてくださいね。

取引内容がなんとなく理解できれば問題なく解けるはずなので、頑張ってください。

 

このページが役に立っていれば嬉しいです。

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