立替金・預り金
一時的に支払う場合は立替金勘定を、逆に一時的に受け取る場合は預り金勘定を使用します。
「代金を立て替える」と言いますよね。
支払う金額を先に受け取っておくことを「預かる」と言いますよね。
なので、勘定の意味は掴みやすいと思います。
問題は、その立替金・預り金が誰に対するものか、どのような内容なのかというのが重要です。
立替金の方は簡単です。
「従業員に代わって立て替える」という状況がメインなので、使用する勘定はそのままの「従業員立替金」になります。
預り金の場合は、従業員に対する「従業員預り金」。
所得税納付のために計上すべき「所得税預り金」。
社会保険料のために計上するのが「社会保険料預り金」。
この3つがメインです。
特に所得税預り金がよく出るので覚える必要があります。
所得税は会社の従業員(一般で言う社員、サラリーマン)にかかる税金です。
しかしこの所得税は給料を支払う会社が代理で収めることになっています。
これが源泉徴収制度。
会社が事前に税金分を差し引くことで、所得税の未納を防ぐことができるのです。
そして、この時差し引く金額を簿記上では所得税預り金と言います。
これらは売掛金や支払手形と同じように、後で支払うだけでお金勘定に分類されます。
しかし、現金や当座預金のような実際のお金ではないため、優先順位は低めになっています。
まずは現金や当座預金の増減を考えることが大切になります。
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例)従業員の給料について源泉徴収していた所得税100,000円を小切手を振り出して税務署へ納付した。
「源泉徴収していた所得税」と言う言葉から、所得税預り金を使用することがわかります。
立替金の場合は「立て替える」という言葉が直接出てくるので、区別はしやすいです。
この問題も考え方は同じです。
小切手を振り出して支払った→お金の減少→お金勘定が貸方。
この時使用する勘定科目は当座預金勘定ですよね。
そして相手勘定は、所得税預り金。
金額はそのまま。
(所得税預り金)100,000 (当座預金)100,000
覚えなくても良いですが、所得税預り金は負債です。
今回の問題は所得税を支払った時点の話なので、以前(給与支払い時)計上していた負債である所得税預り金を消す、という仕訳が必要になります。
このように考えることが、おそらく普通の道筋です。
こちらがわかりやすいという方はこちらでも良いですよ。
僕は受験時代にこのように考えたことはなかったですけど……。
例)従業員への給料の支払いにあたって、給料総額 ¥ 400,000 のうち、先に立替払いしていた従業員の生命保険料 ¥ 30,000 と、所得税の源泉徴収分 ¥ 50,000 を差し引き、残額を当座預金口座から従業員の普通預金口座へ振り込んだ。
今回の問題は長くややこしいと思います。
しかし、これも句読点前を重点的に読んでください。
そうすると、給料の支払い・差し引き・振り込んだ、とあります。
なんとなく、支払いの前後で借方と貸方が別れる気がするはずです。
「〜の支払い」という時点で、支払う金額はもう決まっていますからね。
支払い、ということはお金の減少です。
貸方にお金勘定。
今回は「立替払い」と「所得税の源泉徴収分」と「当座預金」ですね。
立替払い→従業員立替金勘定。
所得税の源泉徴収分→所得税預り金。
当座預金の金額はこの2つの金額と支払う給料の差額。
借方は給料勘定になります。
注意すべきなのは、この仕訳が店側のものということ。
そのため、振り込んだ普通預金の残高増加は店に全く関係がないのです。
ですので、「普通預金が増えたから借方にお金勘定を使う」ということはダメですので注意してください。
よってまとめると、
(給料)400,000 (従業員立替金)30,000
(所得税預り金)50,000
(当座預金)320,000
このようになります。
ちなみに、簿記3級の第1問では勘定科目の指定があります。
そのため、今回の問題で使用した「所得税預り金」という勘定科目が存在しない場合も考えられるのです。
その場合は「預り金」という大きなくくりとなる勘定科目を使用しましょう。
預り金の具体的な勘定科目が「所得税預り金」ですので、この使用は問題ありません。
立替金の場合も同じです。
従業員立替金がなければ「立替金」という勘定科目を使用してください。
(給料)400,000 (立替金)30,000
(預り金)50,000
(当座預金)320,000
どの勘定科目を使うのかは問題に従えばいいので、そこまで難易度は高くないと思います。
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