減価償却の必要性
減価償却の必要性はいくつかありますが、やるべき理由は様々な効果が得られるからですね。
それがこの3つです。
・固定資産の流動化
・自己金融効果
・毎期の損益計算の正確化
それぞれ解説していきます。
固定資産の流動化
有形固定資産とは、その名の通り”固定資産”です。
固定資産ですので、通常これが現金などの貨幣に変化することは1年後以降の話になります。
しかし、減価償却をすることによって、その固定資産を購入するときに支払われた資金が、貨幣性資産によって回収できるのです。
この場合には、固定資産の一部が減価償却の手続きによって流動資産に転化したことになり、これを固定資産の流動化と呼ぶのです。
というのが、専門書レベルの解説です。
もっと簡単に説明します。
固定資産というのは、使用によって価値が減少していきます。
パソコンも10年ほどで型落ちになり、重くなります。
冷蔵庫も10年使っていればガタがきますよね。
こうなると、10万円で購入したものであろうと、客観的な価値はほぼゼロになってしまいます。
固定資産の価値の減少は主に使用によって起こります。
固定資産の使用は何を目的としているのかといえば、売上を上げるためです。
機械を使って加工する作業も、仕入れてきた部品だけを横流しにするだけでは儲からないから。
このように、固定資産を購入する理由は売上を上げるためです。
ではその購入した固定資産を使用した場合の価値の減少は何と対応しているのか。
それは売上と対応しているのです。
食べ物を買って食べた場合、満腹感が得られる。
ゲームを購入してプレイしたら、楽しい時間が得られる。
固定資産を使用すると、多い売上が得られる。
こんな感じのイメージです。
そのイメージが得られれば、固定資産の価値が使用によって減少することで売上が増加する。
売上が増加すると、それだけ多くの現金(資産)が得られる。
という流れが理解できると思います。
つまり、固定資産が使用によって価値が減少し費用となる(減価償却費)。
使用したことで売上(収益)が増加し、多くの現金(資産)が得られる。
固定資産→費用→収益増→資産増。
という流れになっています。
これを見てわかる通り、固定資産が減価償却費と収益を通じて資産を得ることができています。
固定資産が現金などの流動資産に変わる。
このことを”固定資産の流動化”と言うのです。
自己金融効果
減価償却費というのは、現金などの支出が発生しない費用です。
その減価償却を行う固定資産の購入時点に現金をすでに支払っていますからね。
その固定資産の金額を減少させるだけの処理なので、現金が減少することなど起こり得ません。
そんな減価償却費は費用ですので、当然ですが純利益額に影響を与えます。
減価償却費があることで純利益が減少します。
つまり、翌期の処分可能利益も減少するのです。
実際の数値例を見てみましょう。
売上14,000(原価9,000)、減価償却費1,000。
この場合、利益は4,000ですよね。
つまり、この4,000が翌期に処分可能利益です。
※処分可能利益とは、翌期に使える余ったお金のこと。
余ったお金が4,000というのはおかしいですよね?
売上と原価を差し引いた5,000が手元に残っているはずなのに。
この差が自己金融効果です。
手元に余っている実際のお金は5,000だけど、報告書上の余ったお金は4,000しかない。
この差額の1,000が減価償却費によって生じたものです。
減価償却費が支出を伴わないことで、現金1,000が出て行かず手元に残っているということです。
よって、報告書上では4,000が余っていて使えるお金なので、差額の1,000は使わずに置いておくことになります。
置いておくことで、固定資産が使えなくなった時に買い換えるお金も貯めておけますよね。
これが自分で貯金しているような効果を得られる、というところから自己金融効果と名付けられたのです。
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毎期の損益計算の正確化
固定資産は使用することで価値が減少する、と言いました。
その減少を減価償却費という科目を用いることで、毎期一定額費用が計上されます。
これによって毎期の損益計算がより正確となります。
適正な損益計算のためには、固定資産の価値の減少に対応して、その取得原価を各期間に規則的に分配することが必要となるのです。
もしそのような取得原価の分配を行なわなかった場合、固定資産を除却した時点で多額の損失が発生してしまいます。
また「減価償却費が売上と対応している」と再三言いましたが、この対応関係をきちんと毎期記載していなければ適正な損益計算ができているとは言い難いですね。
費用収益対応の原則によっても、減価償却費は求められていると言っても良いでしょう。
まとめ
減価償却とは、有形固定資産の取得原価をその耐用期間(使用可能期間)における各事業年度に分配する手続きです。
その効果は様々です。
今回あげた3点以外にも、利害関係者保護のため、などがあります。
理論的なことに興味がある方は、ぜひ上位級を目指して勉強してみるのも良いのではないでしょうか。