このページでは過去問として、第1問の問題を解説していきます。
ある程度の知識があるもの、として説明は行います。
忘れている項目がある人はこの機会に覚えなおしてみましょう。
解説を読む前に、こちらでお金勘定の使い方を確認してください。
これを読まないとおそらく解説が理解できないと思います。
第117回第1問
この回は難易度高めです。
徹底的に知識を問う問題ばかり。
ということで、ここの問題がある程度わかる人は知識がかなり定着してきているのではないでしょうか。
とは言え、基本的な考えは変わらないので、お金勘定を軸に仕訳を作っていきましょう。
⑴決算に当たり、現金の手許有高を調べたところ、帳簿残高は ¥ 300,000 であるのに対して、実際有高は¥280,000 であった。この現金過不足額のうち ¥ 8,000 は、従業員個人が負担すべき交通費を店の現金で肩代わりして支払った 取引が未記帳であったためであることが判明したが、残りの現金不足額の原因は不明である。
⑵商品 ¥ 150,000 を仕入れ、代金のうち ¥ 120,000については、仕入先を名宛人とする約束手形を振り出して支払い、残額は掛けとした。
⑶前期に貸倒れとして処理した売掛金 ¥ 100,000 のうち、¥ 80,000 が回収され、当座預金の口座に振り込まれた。な お、貸倒引当金勘定の残高は ¥ 60,000 である。
⑷給料日に、従業員に対する給料から所得税の源泉徴収額 ¥ 30,000 を差し引き、手取り金 ¥ 170,000 を当座預金の 口座から振り替えて従業員に支払った。
⑸水道光熱費 ¥ 60,000 と事業主の所得税 ¥ 240,000 を当座預金の口座から振り替えて支払った。なお、水道光熱費 のうち ¥ 20,000 は、事業主個人の家計が負担すべき金額である。(資本金勘定は使用できない)
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解説
⑴決算に当たり、現金の手許有高を調べたところ、帳簿残高は ¥ 300,000 であるのに対して、実際有高は¥280,000 であった。この現金過不足額のうち ¥ 8,000 は、従業員個人が負担すべき交通費を店の現金で肩代わりして支払った取引が未記帳であったためであることが判明したが、残りの現金不足額の原因は不明である。
この問題、長い文章が厄介です。
まずこの問題は決算時の仕訳になっています。
そして次に「現金の手元有高を調べたところ、帳簿は・実際は」とあるので、現金過不足に関する事柄だとわかります。
まずはこの仕訳。
現金の帳簿が実際より多いということで、実際の金額に合わせていきましょう。
ということで、行うべきは現金を20,000円減少させる仕訳。
現金の減少→貸方に現金。
(現金過不足)20,000 (現金)20,000
そして後半。
句読点前の言葉から、判明したものと不明なものの2つがあるとわかりますね。
判明したものは「従業員が負担すべき交通費を店の現金で肩代わりして支払った取引が未記帳であった」こと。
この文章でのキーワードは「従業員が負担すべき」と「肩代わり」という点。
「従業員が負担すべき」と書かれていないと、交通費として計上します。
「肩代わり」でなく「概算払い」であれば仮払金になっていました。
(仮払金の場合、未だ交通費は発生していないということになります)
この2つのキーワードから導かれる勘定科目は「従業員立替金」です。
おそらく名前の通りなので、説明不要でしょう。
そして、不明なもの。
最初に書かれている「決算にあたり」という言葉がここで必要になります。
もし決算でない場合は、判明した金額分だけ現金過不足から減額する処理が取られるのです。
たられば話は置いておいて、今回は決算時。
なので、不明な金額は雑損益勘定に振り替えましょう。
これらは現金過不足の内容についての話だったので、相手勘定が現金過不足になります。
従業員立替金の支払い→お金勘定の減少→貸方にお金勘定(今回では相手勘定は現金過不足)。
これは現金が減っている原因の仕訳です。
なので、使用する雑損益は損の方になります。
(従業員立替金)8,000 (現金過不足)20,000
(雑損) 12,000
これで文章の前半と後半の仕訳を合わせます。
(現金過不足) 20,000 (現金)20,000
(従業員立替金)8,000 (現金過不足)20,000
(雑損) 12,000
これでも正解です。
しかし、左右に同じ勘定科目と金額が乗っているので、あまりスマートな仕訳ではないですね。
なので、現金過不足は相殺してあげましょう。
(従業員立替金)8,000 (現金)20,000
(雑損) 12,000
この2つの仕訳のどちらかが書けていれば正解になります。
⑵商品 ¥ 150,000 を仕入れ、代金のうち ¥ 120,000については、仕入先を名宛人とする約束手形を振り出して支払い、残額は掛けとした。
1問目が難しかったため、他の問題は比較的簡単です。
この問題では「名宛人」という言葉が出てきますが、完全に無視しても大丈夫。
注目すべきなのは、「当店が振り出したのか裏書譲渡したのか」。
今回は当店が振り出したので、普通に支払手形勘定で処理しましょう。
残りは掛け。
仕入れなので、この掛けは買掛金ですね。
仕入れ→お金の減少→お金勘定は貸方。
解答
(仕入)150,000 (支払手形)120,000
(買掛金)30,000
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⑶前期に貸倒れとして処理した売掛金 ¥ 100,000 のうち、¥ 80,000 が回収され、当座預金の口座に振り込まれた。なお、貸倒引当金勘定の残高は ¥ 60,000 である。
前期貸倒れ、当期回収の売掛金が当座預金に振り込まれた。
お金の増加→お金勘定(当座預金)は借方。
相手勘定は売掛金ではありません。
前期に貸倒れとして処理しているので、これは償却債権取立益を使用します。
当座預金に振り込まれた金額が、増加したお金になります。
なので、それ以外の資料は全てダミー資料です。
解答
(当座預金)80,000 (償却債権取立益)80,000
⑷給料日に、従業員に対する給料から所得税の源泉徴収額 ¥ 30,000 を差し引き、手取り金 ¥ 170,000 を当座預金の 口座から振り替えて従業員に支払った。
これは給料の支払いの問題ですね。
給料の支払い→店のお金が減少→お金勘定が貸方。
ここで問われている知識は、所得税預り金というシステムを知っていますか、ということ。
このことを知らない場合、給料の金額を当座預金から支払った金額と同額にしてしまいます。
店は給料を支払いますが、その過程で所得税を代理で支払っているに過ぎません。
そのため、店が支払う給料の金額は実際に従業員が受け取る金額+所得税分になります。
解説
(給料)200,000 (所得税預り金)30,000
(当座預金) 170,000
⑸水道光熱費 ¥ 60,000 と事業主の所得税 ¥ 240,000 を当座預金の口座から振り替えて支払った。なお、水道光熱費 のうち ¥ 20,000 は、事業主個人の家計が負担すべき金額である。(資本金勘定の使用はできない)
これで問われているのは、店が負担する費用と事業主が負担する費用の区別が付き、仕訳が行えますか?ということ。
店の費用は普通に処理しますが、事業主に関連する費用は資本金勘定か引当金勘定で処理を行います。
今回は資本金勘定が使用できないので、引当金勘定で処理しましょう。
まずは店が負担すべき費用の金額です。
これは問題文に書かれている通り。
水道光熱費の60,000円ですが、事業主個人の家計が負担すべき20,000円が含まれているということで、差し引き40,000円が水道光熱費になります。
事業主の所得税、これは店が負担する必要はありません。
なのでこれは全額引当金勘定になります。
お金の支払い→お金の減少→お金勘定が貸方。
今回の支払いは当座預金から行なっているので、お金勘定は当座預金。
解答
(水道光熱費)40,000 (当座預金)300,000
(引当金) 260,000
まとめ
今回は知識問題ばかりであまり面白みがない問題になります。
知らないと絶対に正解ができないので・・・。
従業員立替金・償却債権取立益・所得税預り金・引当金の使い方、存在は覚えていきましょう。
このページがあなたの役に立ったのなら嬉しいです。