減価償却費の定義
建物、備品、車両運搬具などは、使用による物理価値の減少、陳腐化により機能的価値の減少によりその価値が減少する。
この価値の減少のことを「減価」という。
決算日に当期中の価値の減少分を費用として計上し、同時にその減価部分に相当する金額だけ固定資産(建物、備品、車両運搬具等)の取得原価を減少させる。
この手続きを「減価償却」という。
これが定義になります。
覚える必要もありませんし、わかりにくいので身近なもので考えましょう。
わかりやすいのが家電などですね。
家電は使えば使うほど劣化したり汚れたりします。
その劣化や汚れは、その家電の「価値を下げている」と考えることが可能です。
例えば、最初5万円で購入した掃除機。
これを使用し続けると、当然汚れるし、吸引力がだんだんと弱まっていきます。
そうなってくると、その掃除機に購入時の値段5万円の価値があるかと聞かれると、当然「ない」と答えざるを得ないですよね。
では使わなければ汚れないし吸引力も落ちないのでは?と思いませんか?
確かに、掃除機自体は汚れませんし、購入時のポテンシャルが保持されているでしょう。
しかし、家電は毎年いくつも新商品が出てきます。
「吸引力が落ちない掃除機」「コードレス掃除機」「掃除ロボット」などなど。
その中、昨年購入した定価5万円の掃除機を5万円で買う人はいるでしょうか?
「型落ち」と言う扱いで家電量販店で若干安く売られているところを見たことはありませんか。
まさに減価償却というのはこのような事象を表しているのです。
掃除機は使えば性能が下がり、価値も減少する。
使わずに置いておいても、新商品などの発売により掃除機自体の性能が相対的に落ちてしまい、価値が下がっていく。
※減価償却の説明では、使用せずとも価値は下がると言いましたが、問題では使用開始後から減価償却の計算を行なっていきます。
この減少を費用として計上することを簿記上では「減価償却」と言うのです。
この部分の区分はどこか。
これは消去法で割り振られます。
「資産ではない(使用価値があるかどうか)」
「負債でもない(借金などとは違います)」
「収益でもない(価値が減少しているのに、そこからお金が入ってくるわけではないですよね)」
よって残っている「費用」に区分されます。
減価償却に使用される科目が「減価償却費」なのも費用として計上するからです。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
減価償却の仕訳
減価償却は、固定資産の価値を減少させていきます。
ですので固定資産から金額を差し引いていくのが普通だと思いがちですが、実際に使用されることはあまり多くはありません。
これは直接金額を減らしていくことで、数年後に固定資産の取得原価がわからなくなってしまう。
そして、減価償却の累計額(当期までにいくら減価償却したのか)を知ることができないという欠点を持っているからです。
この欠点は実務上では非常に問題となるため、通常は間接法を用いて仕訳を切ることが多くなり、試験でも間接法になります。
・直接法
上に書いている、直接金額を差し引くというやり方です。
直接差し引くということで、減価償却費の相手勘定は固定資産勘定となります。
減価償却費は◯◯費になるため、増加時は借方に記入します。
よって、
(減価償却費)×× (建物)××
という形になる。
・間接法
直接法の欠点を除いた方法。
減価償却費の相手勘定を「減価償却累計額」という勘定を用いて仕訳を切ることになります。
よって、間接法では
(減価償却費)×× (減価償却累計額)××
という形になる。
通常、減価償却では間接法を用いられるので、まずは間接法を押さえるようにしましょう。
◯◯減価償却累計額
問題を解いていると、「建物減価償却累計額」や「車両減価償却累計額」などが出現することがあります。
これは間接法を用いられる理由、「累計額の明確化」のための勘定科目です。
固定資産が複数ある会社になると、減価償却累計額」と書かれているだけでは、建物の金額と車両の金額の見分けが付かなくなってしまいます。
それを解消するために使われるのが、「◯◯減価償却累計額」です。
建物の減価償却累計額は、建物減価償却累計額。
このように一瞬で判別可能なので使われているのです。
解答時にはそれぞれの固定資産の減価償却費を、対応する科目で仕訳を行いましょう。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
減価償却方法
減価償却方法は複数ありますが、3級で出題されるものは定額法だけですので、今回はこちらだけ押さえましょう。
・定額法
取得原価から残存価額を差し引いた金額を耐用年数で割ることで、1年分の減価償却費を計算する方法。
この方法では、毎期の減価償却費が一定になるのが特徴です。
取得原価とは、購入した時に支払った金額のことで、これは問題文か試算表などの金額(間接法の場合)になります。
耐用年数とは、使用可能な年数。
これも問題文に必ず明記されています。
残存価額とは、耐用年数が経過した時点での固定資産の価値。
これも問題文に明記されていますが、「10%」と割合で表示されているので具体的な数値は自分で算出することになります。
取得原価・残存価額・耐用年数の3つがわかれば減価償却費の算定は簡単です。
減価償却費の算定式は以下の公式になります。
(取得原価ー残存価額)÷耐用年数
この式だけではピンとこないと思うので、例題を用いて理解をしていきましょう。
例)決算日となったため、当期首に取得した車両10,000円を定額法により減価償却を行う。
車両 残存価額:取得原価の10% 耐用年数:5年
まずは上の公式の通りに解く方法です。
残存価額は取得原価の10%。
取得原価は問題文に10,000円とあるため、残存価額は10,000×10%=1,000となります。
耐用年数は5年ですから、公式に当てはめると、
(10,000ー1,000)÷5=1,800
となります。
よって当期に計上すべき減価償却費は1,800円です。
仕訳は、
(減価償却費)1,800 (減価償却累計額)1,800
となります。
図で表すと、
このようになる。
この図の書き方は覚える必要はありませんが、注目して欲しいのが上の黄色部分。
これは、耐用年数の間に償却する部分なので、「要償却額」と言われています。
この要償却額を耐用年数で割ることで、1年間の減価償却費が求めることができる。
これは図からもわかるはずです。
1,800×5=9,000、これは取得原価から残存価額を差し引いた金額と一致します。
つまり、残存価額をわざわざ求めるより要償却額を直接出した方が早いですよね。
要償却額は、取得原価×(1ー残存価額の取得原価に対する割合)で出すことができます。
これを算数的に証明すると、
取得原価ー残存価額=要償却額
取得原価ー取得原価×割合(今回では10%)=要償却額
これを取得原価でくくると、
取得原価×(1ー割合)=要償却額
となります。
そしてそれを耐用年数で割ると、1年あたりの減価償却費が算定されます。
よってまとめると、
取得原価×(1ー割合)÷耐用年数=減価償却費
上の証明なんて覚える必要ないので、この公式を覚えるといいです。
とはいえ、覚えようとはしなくても3級試験が終わる頃には無意識にこの公式は作ることができます。
ど忘れしても、それぞれの言葉の意味を推測すれば作ることはできると思うので、大丈夫です。
さて今回の問題の最速解答の式は、
10,000×(1ー0.1)÷5=1,800
となります。
残存価額が10%ということは、なくなる部分が90%→取得原価の90%が要償却額で、それを耐用年数で割る。
この順番で考えてください。
そうすると、どのような問題でも素早く解答できます。
あくまでこれは金額を出すだけですので、仕訳は別で考えてください。
減価償却の月割計算
減価償却の問題を解いていると必ず出てくるのが「月割計算」。
当期の途中で取得し、使用を始めたという場合です。
これは上の減価償却費の計算で求めた数字の意味を理解していると簡単に解くことができます。
一つ前の公式では、耐用年数という単位を使いました。
そのため、算出される減価償却費は1年間の数値ということになります。
しかしこれから求めるのは、2ヶ月、7ヶ月という期間の減価償却費です。
そのため、必要なのは1年間の減価償却費ではなく、1ヶ月の減価償却費ということになります。
1年間の減価償却費は上の公式、要償却額を耐用年数で割ることで出せます。
1ヶ月の数値はそこで出した数字を12で割るだけで出すことができますよね。
1年間で12,000円だと、1ヶ月あたりでは1,000円になることはすぐにわかるでしょう。
これは12,000÷12という計算を素早く行なっているからなのです。
そのため、耐用年数を用いて出した数値を12で割ることで1ヶ月分の減価償却費が出せます。
1ヶ月あたりの減価償却費が出せたら、あとは使用した月数をかけてあげるとおしまいです。
1ヶ月あたり1,000円、2ヶ月では2,000円、7ヶ月では7,000円になりますよね。
一応公式を書いておくと、
取得原価×(1ー取得原価に対する残存価額の割合)÷耐用年数÷12×使用月数=当期計上すべき減価償却費
となります。
作り方を知っていればこの式を丸暗記することなんてないので、作り方をまずは押さえるようにしてください。
以上で3級の減価償却費の話はおしまいです。
減価償却費に関わる、固定資産の売却についてはまた別に書いていますのでそちらを参考にしてください。
このページがあなたの役に立ったのなら嬉しいです。