理解を高める考え方

固定資産の売却

 

固定資産の売却について

固定資産はいずれ売却や処分などが行われます。

使われなくなった建物、備品、車は当然売却されたり処分されたりし、店は代わりに新しい固定資産を購入します。

普段の生活と同じです。

壊れたり古くなった家電は買取してもらう、捨てるなどしますよね。

その時の店側の仕訳を考えていきます。

 

店側は固定資産を売却します。

固定資産は減価償却費のページでもみたように、年々減価償却されることで価値が減少していきます。

そしてその減少した額は減価償却累計額に計上されていきます。

期首時点で固定資産が建物1,000のみ、減価償却累計額が400となっていたとする(間接法)。

この場合、建物の実際の価値は取得原価1,000ー減価償却累計額400=600となります。

この建物を期首に売却することにしました。

 

・500円で売却した場合。

建物の価値は600、受け取る金額は500。

すると建物の評価額と売却した時の金額と差が出てきます。

建物の評価額>売却価格となっている場合、売却した場合が発生してしまいます。

なぜなら、本来600円の価値がある建物を500円で売ったのですから、そこには100円の損が出てしまいます。

この損失に当たる勘定科目が「固定資産売却損」になります。

 

・700円で売却した場合。

建物は先ほどの数値と同じで受け取る金額が700となります。

すると今度は逆に、建物の評価額<売却価格となり、売却した場合儲けが出てくることになります。

なぜなら600円の価値があるものを700円で売れたのです。

ここには本来受け取れる金額以上のお金が入ってくるので、利益として受け取れます。

この時に使用されるのが、「固定資産売却益」です。

 

売却損発生の場合

これを仕訳で表すとどうなるか。

まずは500円で売却した場合。

現金が500円受け取れるので、借方に現金です。

建物は減少するので、貸方になります。

 

※これがわからない方は建物の取得の仕訳を思い出してください。

(建物)1,000 (現金等)1,000

となります。

この建物を売る→消える→逆側に同じ数値と勘定を書けば良い、となるので、貸方に建物を書くことになります。

 

次に減価償却累計額を消すことが必要になります。

これは、減価償却する対象が消えることで、その固定資産に対応する分の減価償却累計額も同じように消えるのです。

なぜなら減価償却累計額と固定資産はまとめて1つという考え方になっているから。

固定資産の金額と減価償却累計額、この2つがセットで期末の固定資産の価値が決定されます。

ですので、固定資産の減少と減価償却累計額の減少もセットでなければいけないのです。

ですので売却の仕訳には減価償却累計額の減少も同時にする必要があります。

この仕訳を行なった場合の差額が売却損益になります。

最終的な仕訳が、

   (現金)500    (建物)1,000
(減価償却累計額)400
(固定資産売却損)100

このようになります。

 

 

他の作り方の考えとして、減価償却累計額は固定資産の価値の減少分に相当するので先に価値を求めるという方法があります。

そのため、これを使用して固定資産の価値を帳簿に表示するように仕訳を行います。

まず、

(減価償却累計額)400 (建物)400

という仕訳を行い、建物の帳簿価額を減らすことにします。

この調整を行うことで、帳簿上では建物の価格が600となり実際の価値が帳簿に乗りました。

そして売却の仕訳。

ここでは帳簿上、売却する建物の価格が600になっているので、その数値を使います。

ですので、

   (現金)500   (建物)600
(固定資産売却損)100

となります。

しかし、これでは仕訳の解答としては不正解になってしまいますので、価値を減少させた仕訳と売却の仕訳の2つを合わせる必要があります。

ですので最終的な答えは、

(減価償却累計額)400 (建物)1,000
    (現金) 500 
(固定資産売却損)100

このようになります。

 

売却益発生の場合

これは売却損がわかった方には簡単です。

700円で売却した場合。

これは受け取る金額が700になるので、貸方に売却益が出るのが相違点です。

   (現金)  700    (建物)  1,000
(減価償却累計額)400 (固定資産売却益)100

答えがこの形になります。

差額が借方に出た場合「売却損」、貸方に出た場合「売却益」になる。

これ以外は特に説明することはないです。

減価償却累計額の記入を忘れない、ということのみが注意点になります。

 

期中売却の場合

当期首に売却した場合、上で示した仕訳の方法で解答するので比較的簡単です。

では期中に売却した場合どのようになるか。

これは固定資産の期中取得の場合と同じように、減価償却費を月割りで計算し計上します。

固定資産は期末にいきなり価値が下落することは通常ありえません。

(故障などの突発的な事象以外。)

ですので、期中にも徐々に価値が下落していくと考えるのです。

その場合、取得と同じように月割計算で減価償却費を求めていくことになります。

以前に説明していますので、ここでは月割計算の方法は省略します。

 

例)取得原価1,000円 耐用年数5年 残存価額0の建物を×3年6月末に500円で売却した。当期を×4年3月31日が決算日の一年間とする。

×4年3/31 精算表 
   貸方
(減価償却累計額)400

 

以上の資料が与えられているとする。

建物の取得原価と売却金額は問題文に書かれています。

減価償却累計額は精算表に書かれているので、それを使いましょう。

そして、問題が固定資産を期首に売っていないこと。

期首に売っている場合、精算表に書かれている累計額を引くだけで建物の価値がわかります。

しかし期中に売却となると、その時点での価値の減少分は累計額だけではありません。

当然期中にも価値の減少が発生しているので、売却までに経過した分の減価償却費を計上する必要があります。

今回当期中に所持していた期間は、4/1〜6/30の3ヶ月間。

なので、減少は1年=12ヶ月の減価償却費のうち3ヶ月分となります。

よって、3ヶ月分の減価償却費は、

 1,000÷5(1年分)÷12×3(当期所持していた期間)=50

となります。

この減価償却費を通常通り計上します。

   (現金)  500 (建物)1,000
(減価償却累計額)400
 (減価償却費) 50
(固定資産売却損)50

これでこの問題の仕訳は終了です。

 

まとめ

少しややこしいと感じる方がいると思うので、まとめを書いておきます。

①まず固定資産の金額と売却価格を確認。

②減価償却累計額を算出、もしくは問題から見つけ出す。

③必要であれば当期の減価償却費も求める。

④売却する固定資産を貸方、受け取るお金の金額、減価償却累計額、減価償却費を借方に書く。

⑤貸借差額で借方であれば固定資産売却損貸方ならば固定資産売却益と金額を書く。

これで仕訳は完成します。

このように考えて問題を解いてみてください。

固定資産の売却は第1問で出題されることがありますので、得点源としてください。


 

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