2024年4月以降、四半期決算報告書の報告義務がなくなりました。
この制度の背景、目的を書きなぐっていこうかと思います。
そもそも四半期報告書がなぜ必要だったのか
四半期報告書とは、決算が開始した日から3か月毎に3回作成が求められるもので、有価証券報告書と似た内容の書類です。
日本で一番多い3月決算の会社だと、6月・9月・12月末日から45日以内に開示されます。
これが義務付けられたのは、海外の影響が大きいのです。
会計の世界だとよくある、海外がやってるからってやつ。
それまで日本は半年に1回のペースで開示していたから、投資家への情報提供の観点では海外に劣っているぞ!となったわけです。
これが2006年の出来事です。
四半期報告書制度って18年しか開示していないんですね。
歴史は短め。
四半期報告書がなぜ廃止されることになったのか
四半期報告書は情報提供のためにも重要な書類である。
そんな四半期報告書制度が廃止されるのはなぜか。
主な理由はコストの軽減と開示の効率化である。
そもそも四半期報告書は四半期決算短信の内容とほぼ同じなんですよね。
四半期決算短信:四半期毎に開示されるざっくりとした財務諸表。
この2つは情報量・開示スピード・提出先の3点が異なります。
とはいえ、同じような書類を2つも作る意味ってあるの?という根本的な問題があったので、どっちかを排除しようぜ、となった。
結果生き残ったのが、四半期決算短信です。
四半期決算短信の方が先に開示されるから、というのが勝因です。
四半期決算短信だけで良いの?
四半期報告書と四半期決算短信の違い
・四半期報告書
財務局に提出する書類で、情報量が多い
・四半期決算短信
証券取引所に提出する書類で、四半期報告書よりも先に開示される
決算短信は先に開示されるけど、情報量では四半期報告書に劣る。
なので四半期報告書を廃止するにあたり、決算短信の情報量を増やすことになった。
具体的には「セグメント情報等の中期」と「キャッシュ・フローに関する注記」を追加することになりました。
これによって決算短信の欠点を補いながらも四半期報告書よりも早く開示することができるというわけですね。
四半期報告書がなくなることによる影響
四半期報告書を作成開示する制度がなくなることによる影響として何が考えられるだろうか。
投資家たちへの情報量の減少
当然、今まで開示していたものがなくなるということで、外部の人間が得られる情報が減少する。
とはいえ、これはそれほど大きな影響ではないと思われる。
そもそも開示される情報量自体そんなに多くないからだ、
EDINETや会社のHPで見てみると、年度の決算書類である有価証券報告書と比べてページ数が大きく違うのがわかります。
このレベルならば大きな影響はないと言えるのではないだろうか。
四半期報告書作成の手間削減
作成が不要となれば、企業負担が軽減する。
作成のために割いていた人員を他の作業に割り当てられる。
結果、人件費の削減ができ、人手不足対策として作用する可能性がある。
監査報酬の削減
四半期報告書は監査法人によるレビューを受けている。
そのレビューに対して報酬を支払っているが、四半期報告書が廃止されればその支払いが不要になる。
結果として企業側の費用が減少し、新たな投資へと回すことができる。
もって日本経済の発展に寄与することになるだろう。
おまけ・監査法人側への影響
先ほど監査報酬の削減ができて、会社側は嬉しいねといったことを記載したが、その報酬をあてにしている監査法人側はどう思っているのだろうか。
四半期報告書に対して行われる作業を四半期レビューと言うが、それが減少するのだ。
今まで1Qから3Qまで3回あった作業が2Qの半期報告書に対してだけになる。
やったね、仕事が減って楽になるよ!
とはいえ現実問題、四半期報告書がなくなり四半期決算短信だけになったことで会社に対するレビュー手続きすべてなくなるかと考えると、それはあり得ない。
その根拠は主に2つある。
四半期決算短信に対するレビュー
四半期決算短信や年度の決算短信は監査法人による監査の対象ではない。
これはしっかりと決算短信にも記載されているので、是非一度見てみてほしい。
だが、実務上決算短信に対して何も手続きを行っていないかといえばそんなことはない。
どこの法人も、決算短信の数字が間違っていないかをしっかりと確認している。
その後に開示される四半期報告書や有価証券報告書との間に数値の齟齬があるのは好ましくないからね。
それが現状の中、会社としても監査法人にチェックを依頼することなく開示を行うということに抵抗があるだろう。
結果、監査法人に対して決算短信のチェックを依頼するというのはあり得る話だ。
年度の監査のための準備
四半期レビューの手続きがなくなったからといって、年度の監査がなくなるわけじゃない。
ならば、四半期レビュー手続きに割いていた時間を年度の監査のための準備に変えるのではないだろうか。
監査法人は決算期に仕事が集中しており、GWが存在しない業種として有名だ。
その負担を減らすためにも、期末以外でやれる作業は期中にやろうという流れになるだろう。
四半期レビュー手続き自体、年度監査の一環という側面もあるから、やはり作業量は変わらない説もある。
監査法人側で作業量が変わらないとなると、監査報酬の引き下げが実現しないという可能性も浮上してくる。
監査報酬=売上の監査法人が監査報酬の値下げに応じる可能性ってそんなに高くないよな。
結局、会社側の負担が減少して監査法人側はそれほど減少しない、という未来になりそうな感じもしますね。
以上。
会社側に配慮された改正って感じですね。
あと、四半期決算短信に対してレビューをするかどうかは任意で、レビューを受けた場合は決算短信に開示することになりました。
他には会計不正が発生した場合などは監査法人によるレビューが義務付けられてます。
不正があった会社の資料なんだから、当然ですよね。